東京大学(2008), 学部横断型教育プログラム「ジェロントロジー(Gerontology) -加齢にともなう心身機能・生活の変化と適応-」

・ジェロントロジー:様々な学術分野が連携して長生きを心から喜べる社会をつくる学際科学。
・ジェロントロジーの歴史:老年医学(生理的老化, 成人病の研究)+老年社会科学(高齢社会の社会制度・医療機構等)。
・寿命の延長は達成されたが、伸びた分の寿命のQOL(生活の質)をいかに向上させるかが課題になった。そこで出てきた理念が「サクセスフルエイジング(Successful Aging)」である。
・従来の老年医学は、疾患や障害等の高齢期のネガティブな側面に焦点を当てていたのに対し、ジェロントロジーは、「何が出来るか?」という可能性に焦点を当てている。これがサクセスフルエイジングの理念。
・ジェロントロジーは、人のライフスタイル、社会システム、様々な産業と深く関わる学際的学問である。高齢社会の課題は非常に複雑で早急な対応を求められるため、学際的な体系が必須である。
・高齢社会の俯瞰的理解と予測・老化メカニズムの解明と対処の基盤研究と、高齢者を活用するシステム構築・認知症や要介護高齢者のケアと尊厳(地域ケア)・高齢者のQOL向上のための技術(ジェロンテクノロジー)開発という課題解決型の研究が必要である。
・平均寿命(男性:79.19歳, 女性:85.99歳)。日本の人口構成の推移は、全体として減少し続けるが、その内訳は、2050年には、高齢者人口が40%にのぼると予測されている。
・前期高齢者と後期高齢者は明確に区分する必要がある。
・平均寿命が長くなり、これまで考えられてこなかった80代・90代の生き方やライフスタイルをデザインする。
・サクセスフルエイジングの3条件(Rowe & Kahn, 1987):病気や障害が無い, 高い身体機能・認知機能を維持している, 人生への積極的関与(人間関係や社会貢献etc..)の3つの要素がすべて揃ってサクセスフルエイジングである。
・サクセスフルエイジングの理念:「自立して生産的であること」:身体的自立, 経済的自立, 精神的自立, 社会貢献。『Successful Aging』という書籍が出てから、これがライフスタイルの目標になった。
・人口のなかで増加するのは後期高齢者。現在の社会システムはピラミッド型の社会に向けて作られているため、この変化に対応することができない。
・超高齢社会の課題。認知症高齢者数の増加も、2025年には10%にのぼると予測される。それと同時に、高齢者の世帯形態の将来推計も、2025年には一人暮らしが36.9%にのぼると考えられる。現在の社会システムでは、高齢者の一人暮らしに適応することができない。その準備も必要。
・サクセスフルエイジングは素晴らしい理念だが、それをゴールにしてしまうと、かえって高齢者を不幸にする。アメリカでは、「自立して生産的であること」のイデオロギー化が起こってしまっていた。PPK(ピンピンコロリ)する人などほとんどいないため、サクセスフルエイジングを完全なゴールとして設定してしまうと、いくら加齢しても中年期であることを目標として、「老いる」ことを認めなくなってしまった。そういった落とし穴がある。
・後期高齢期(Forth Age)を射程に入れたサクセスフルエイジングとは?その理念を考える必要がある。
・Aging in Place:住み慣れた地域で自分らしく生きること。そのためのコミュニティを構築することが、東大のプロジェクトとして行われている。病院から在宅へ。地域のコミュニティで、安心して生きることができるということが重要で、個々の状況に応じた移動手段だとか、住居の問題、かかりつけ医・プライマリケア体制の整備、訪問看護や訪問介護といったコミュニティのモデルをつくることで、高齢者や家族のQOLやコストで評価する。
・日本の男性の身体的機能は、75歳を境に機能が落ちる。20%がその時期に寝たきりになり、10%の人はほとんど日常生活の動作における身体的機能の低下は見られない。一方女性は、90%の人が、70歳を境に、ゆるやかに身体的機能が低下する。10%は急激に身体的機能が落ちて寝たきりになる。男性と女性の身体的機能の低下のプロセスは異なる。ただ、男女共通で言えるのは、70歳までは身体的機能の低下は見られない。仕事や住まいの大きな変化は、70歳前半までにやっておいた方が良い。
・現在の80〜90歳の後期高齢者は、「自分はこんなに長生きするつもりではなかった」という人が大半。だから、自分で後期高齢者のライフスタイルをデザインすることが難しい。自分で後期高齢期のライフスタイルを始めから計画してデザインできる最初の世代は、団塊の世代である。ある意味では、その市場は非常に大きいと考えられる。
・世界の人口高齢化率の推移(1950-2050)では、ことにアジアの高齢化が加速している。日本は超高齢社会のトップランナーとして、世界中から日本の対応が注目されている。後期高齢期も成功して生きられる社会システムの構築を急ぐ必要がある。
・グローバル・エイジングの課題:「人口動態の予測, 健康寿命の延長, 高齢者の就労・社会参加, 持続可能な社会保障システム, 変わる家族形態の機能, 包括的な地域ケア・システム, 高齢社会の新たな価値と産業の創成, 発展途上国の高齢化問題」である。
2012-03-19 | Posted in 人文, , 社会No Comments » 

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