第10回鈴木孝夫研究会(2011.11.27)まとめ

 第10回の鈴木孝夫研究会に参加してきた。今回のテキストは「人にはどれだけのものが必要か」および「しあわせ節電」という、言語学の領域には属さない取っ付き易いテキストだったので、比較的大学生の質問者が多かった。以下書き留めたまとめ。

 現在の人類活動の膨張や科学技術の発達は、人類のライフスタイルを豊かにするために努力されているものだが、巨視的な視点で見ると、その発展が人類の危機を招くという逆説的な状況が起こりつつある。時間軸を長くとって人類の未来を見ると、人類は縮小すべき時代に差し掛かっているのだから、自分の破滅を早めるために科学技術の発展や経済成長を促進しているとしか思えない。
 徳川時代は、3000万人もの人々が、260年間に渡って、ゼロ成長で幸福であった。現在の発達した交通網も、通信手段も存在しなかったが、徳川時代を生きた人々は悲惨な生活をしていたわけではなかった。
  現代科学の発達によって文明が便利になればなるほど、「こうでないと豊かでない/幸福でない」と考えてしまいがちだが、現代社会におけるライフスタイルで世界に必要とされるのは、日本が守ってきた文化や世界観なのではないか。
 文化的多様性の話。宗教にも文化にも、多様性の維持は非常に重要。生物学的にも多様性は極めて重要な要素だが、人間とその他の生物との多様性の相違は、「動物は環境に適応するが、人間は環境を変える」という点。人間は環境を適応させる。
 その環境を変えるのが、人間の周囲に広がっている「文化」である。環境を変えるためには文化が必要であった。そして、文化の最大の特徴/要素こそが、「言語」。多くの著書で論じているように、言語の多様性を維持することが、人類における文化的多様性の維持に結びつく。世界統一語は人類を絶滅させる。
 人間の縮小時代における新しいライフスタイルをリデザインする必要がある。その観点で、古来の日本文化が培ってきた仏教的世界観/宗教観や、徳川時代のライフスタイルを再考する必要があるのではないか。
 キリスト教は「神が日本のために世界を創造した」という世界観を持っている。数多くの国々で、そういった人間中心主義的な宗教観が主流になっているが、日本は国家として閉鎖していた影響もあいまって、キリスト教的な文化に染まっていない。下駄やハリを祀ったり供養したりする行事があるほど、日本は「おかげさま」的な文化が発達しており、脈々と受け継がれている。その日本的文化は、どちらかと言うと仏教的な世界観であり、「万物は流転する」といった古代ギリシアの世界観でもある。この日本的な文化を、全世界に向けて発信すべき。そのためには、既存の欧米中心主義を排除する必要がある。もっと日本文化に胸を張り、世界に生き方を提案する。
 あと、新刊「あなたは英語で戦えますか」でも書いたが、日本人は空気を読む。日本人に欠如しているのは、自分のユニークさ、固有性に目覚めるということで、だからこそ欧米中心主義とは異なった、日本独自の視点を発信していけばいい。欧米中心主義に関しては、アフリカや東南アジアも大きな影響を受けているから、先述の多様性の例で考えてみても、世界規模での多様性の維持のためには、欧米中心主義を各国が排除する必要性がある。
 地球原理の話。これまでの地球環境問題の解決のための潮流は、「人間の欲望が膨張したから地球環境が壊れた」という描きだったが、地球原理はその逆で、「自分の欲望を最大限に増幅させ、『地球は自分のものである』と思い込むことで、みんなが地球をクリーンに維持しようとする」という主張。欲望の縮小は無理を強いられるが、地球原理は欲望の拡大なので、QOLを維持したまま、人類活動を縮小していくことができる。
 地球原理の思想を植え付けるには、例えば孫などには、「面白がらせる」ことが重要。学問の芸術なので、面白がらせて、自分の主張を通していかなければ普及していかない。
 それを実践することが非常に重要で、ソクラテスが哲学的人生と言ったが、哲学 “学” をやる人は多いなかで、実践の伴った哲学的人生を歩む人は少ない。本を読むだけでなく、実践のなかで哲学をしなくてはならない。実践する思想家。
 ・都市部と田舎の隔たり。経済成長至上主義の最終地点。資本主義の行き着く所。お金では買うことができない幸福の種類。それを都市と田舎という比較のなかで見ると、従来の資本主義的な視点だと「田舎には何もない」となってしまうが、ほんとうは自然も動物もいて、「田舎は魅力が多く詰まっている」となる。イギリスでは、お金を稼いだら、最終的には田舎に戻る。しかし日本では、田舎よりも都市の方が価値があるから、それを変えなくてはならない。それは経済成長を至上とする思想に起因する。
 では、その問題を変えるにはどうするのか。育つ環境を変えれば、全体の価値は変わる。子どもの頃から自然に触れさせることで、経済成長や資本主義よりも豊かな成長が可能になる。
 ・「無駄」と「便利さ」の関係。エンジニアの哲学。工学の論理に道徳はあるか。思想はあるのか。
2011-12-01 | Posted in No Comments » 

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